立ち退きと正当事由 老朽化していることは正当事由になるか
2019.06.07
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは、弁護士の松井です。
今回は立ち退きについて借主側のお話をしたいと思います。
相談でよくあるのは、
貸主もしくは貸主の代理人と名乗る不動産業者から、
建物からの立ち退きを要求されているというものです。
この時、気をつけておかないといけないのは、
貸主側から建物が老朽化しているなど色々な理由を言われて
立ち退かないといけないかのように思い込まされることです。
貸主側から、もっともらしい理由を言われて立ち退きを要求されたら、
そうなのかとしぶしぶ承諾してしまう人もいることでしょう。
ただし、通常の建物賃貸借契約の更新を拒絶したり、
解約申し入れをするには正当な事由が必要となります。
たとえば老朽化について、正当事由の事情のひとつにはなると思いますが、
実際に当該建物を借主が現状で問題なく使用できているのであれば、
使用不可能なほど老朽化しているわけではなく、
老朽化だけで正当事由が認められるのは困難でしょう。
そうするとそのほかに貸主側と借主側の自己使用の必要性や
立退料の金額が重要になってきます。
自己使用の必要性とは、
貸主と借主が当該建物を使用する必要性があるかということです。
たとえば、貸主が年をとって体が悪くなったので1階の当該建物が良いとか、
借主が当該建物で長年お店をやっているので固定客がいるなどです。
立退料についても、色々な考え方がありますが、
貸主側からすれば、できれば低額の方が良いので、
最初の交渉では、立退料は全く出さないとか、
引っ越し費用だけ出すなどという場合もあるでしょう。
立退料はいらないという方もいると思いますので、
絶対立退料をとって下さいというつもりはありませんが、
貸主側から立ち退きないといけないかのように思い込まされ、
または無知につけ込まれて追い出されるというのは理不尽ですよね。
立ち退きを要求されたら、ひとりで悩まずに専門家に相談しましょう。