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陽なた法律事務所の弁護士が綴る、日常や法に関する豆知識ブログです。

「住宅用に使う」と言われて土地を売却したら、実は太陽光発電目的だったー売買契約を取り消せる?

2026.10.26

執筆者 陽なた法律事務所 弁護士  松井竜介

 

こんにちは。弁護士の松井です。

 

土地を売却するとき、売主にとって、「誰に売るのか」だけでなく、

「買主がその土地を何に使うのか」が重要な場合があります。

たとえば、

「住宅として使うのであれば売ってもよいが、大規模な事業用地にはしたくない。」

と考える地主の方もいるでしょう。

 

では、買主から「住宅用に使います」と説明されて土地を売った後、

実は最初から別の事業目的で購入していたことが分かった場合、

売主は契約の効力を争うことができるのでしょうか。

 

今回は、実際の裁判例を参考にした架空の相談事例により、

買主が土地の購入目的を偽っていた場合の「錯誤」について解説します。

 

【相談内容】

土地を所有していたAさんからのご相談。

Aさんは、以前から土地の売却を検討していました。

 

あるとき、太陽光発電事業を行っている会社の関係者から、

「この土地を太陽光発電に使いたいので売ってほしい。」と申し出を受けました。

しかしAさんは、「太陽光発電用地にはしたくありません。」

として、その話を断りました。

 

その後、別のBさんから、「住宅か別荘を建てるための土地を探しています。」

と購入の申込みがありました。

 

Aさんは、住宅や別荘として利用するのであれば問題ないと考え、

Bさんに土地を売却しました。

 

ところが、売却後になって、Bさんが実際には当初から、

太陽光発電事業に利用する目的で土地を購入していたことが分かりました。

 

しかも、以前Aさんが太陽光発電目的での売却を断った関係者と、

Bさんとの間には関係があったようです。

 

契約書には、「太陽光発電に使用してはならない。」という条項まではありません。

Aさんは、「住宅用だと聞いたから売ったのであって、

太陽光発電用地になると分かっていれば絶対に売りませんでした。」

と話しています。

 

このような場合、売買契約の効力を争うことはできるのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

結論から申し上げると、

土地を何のために利用するのかが、

売主にとって契約をするかどうかを左右する重要な事情であり、

そのことを買主も分かっていた場合には、

買主が利用目的を偽ったことを理由として、

錯誤による取消しが問題となることがあります。

 

今回参考となるのが、東京高等裁判所令和3年10月14日判決です。

この裁判では、売主は「住宅又は別荘用地として利用する」と説明を受けて、

土地を売却しました。

しかし実際には、買主は当初から太陽光発電事業に利用する目的で、

土地を購入していました。

 

結論として、裁判所は、売主の錯誤の主張を認めました。 

 

売主は以前、太陽光発電目的の売却を断っていた

この事件では、以前にも、太陽光発電事業を行う会社の関係者から、

土地を購入したいとの申出がありました。

 

しかし売主は、その目的が太陽光発電事業であることを知ると、

「その目的では売却できない。」

として購入申込みを断っています。 

 

その後、別の人物が、「居住用又は別荘用として利用する。」

として土地を購入しました。

 

ところが実際には、この買主も、

当初から太陽光発電事業に利用することを前提として、

土地を購入していたことが裁判で認定されました。 

 

「住宅用だから売る」という考えも契約上重要になることがある

裁判所が重要視したのは、

売主がなぜこの土地を売ろうとしたのか

という点です。

 

売主は、「住宅又は別荘用地として利用されるのであれば売却する。」

という前提で契約していました。

そして買主も、媒介業者や売主に対して、

一貫して住宅・別荘用地として購入するという説明をしていました。

 

 

裁判所は、このような事情から、

売主には買主による土地の利用目的についての錯誤があったと判断しました。

 

契約書に「太陽光発電禁止」と書いていなくても認められた

この判例で特に興味深いのが、

売買契約書や重要事項説明書に「太陽光発電施設を設置してはならない」

という明確な禁止条項がなかった

という点です。

買主も、このことを理由に、

「契約書に禁止すると書いていない以上、契約の効力に影響しない。」

と主張しました。

 

しかし、裁判所はこの主張を認めませんでした。

 

以前、太陽光発電目的での購入を売主が断っていたことを買主側も認識しながら、

それでも「住宅・別荘用」と説明して購入していたという経緯から、

売主が「住宅又は別荘用地として使用されること」

を前提に売却するという動機は、黙示的に相手方に表示され、

契約の重要な要素となっていたと判断したのです。 

 

つまり、契約書に明記されていない事情であっても、

契約締結までの経緯によっては、

契約の効力を左右する重要な事情になることがあります。

 

現在の民法では「無効」ではなく「取消し」

この判決では、旧民法が適用されたため、

錯誤による売買契約の無効が認められています。

もっとも、令和2年4月施行の改正民法では、

錯誤の効果は原則として取消しに変更されています。

 

また、錯誤による取消しは、

一定の場合には善意無過失の第三者に対抗できません。

 

そのため、土地がさらに第三者に転売されるおそれがある場合には、

早期の対応が特に重要になります。

 

実際、この裁判でも、売主は土地がさらに処分されることを防ぐため、

処分禁止仮処分を申し立てていますので、

大変参考になる判例および事実関係だと思います。

 

【今回のポイント】

今回の東京高等裁判所令和3年10月14日判決では、

「住宅又は別荘として使うのであれば売却する」

という売主の考えを買主も知っていたにもかかわらず、

実際には太陽光発電事業を目的として土地を購入していた

という事情から、売主の錯誤が認められました。

 

特に重要なのは、

契約書に利用目的の禁止条項がなければ何をしてもよい、

とは限らないという点です。

 

契約締結までのやり取りから、

「この用途だから売る」「この用途であれば売らない」

ということが相手方にも明らかになっていた場合には、

その利用目的が契約の重要な前提として評価される可能性があります。

 

一方で、「本当は住宅にしてほしかった。」という売主の内心だけでは足りません。

売主がその考えをどのように相手方へ伝えていたのか、

買主がそれを認識していたのかなど、

契約締結までの具体的な経緯が重要になります。

 

不動産売買で利用目的が重要な場合には、後日の紛争を防ぐためにも、

できる限り契約書に使用目的や禁止用途を明記しておくことが望ましいでしょう。

 

また、売却後に買主の説明が虚偽だったことが判明した場合には、

第三者への転売が行われる前に迅速に対応する必要があります。

 

※なお、上記事例はあくまで架空のものであり、

実在の人物、団体とは一切関係ありません。

 

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【参考記事】

高齢者の不動産売却トラブル、著しく低額な売買は無効になる?

 

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