不動産会社に売却を任せたはずが… 「媒介契約」と「買取」の違いをめぐるトラブルとは?
2026.07.01
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは。弁護士の松井です。
今回は架空の相談事例をもとに、
不動産売却における「媒介契約」と「不動産会社による買取」の違い、
そして宅建業者が売主から直接買い取って転売した場合に、
問題となった裁判例について解説します。

【相談内容】
不動産所有者(売主)Aさんからのご相談。
Aさんは、所有している土地建物の売却を考え、
不動産会社B社へ相談しました。
B社の担当者からは、
「購入希望者を探して売却のお手伝いをします」
と説明を受け、AさんはB社との間で媒介契約を締結しました。

その後、B社はAさんの不動産について購入希望者を探す活動を行いました。
しばらくして、B社の担当者から、
「なかなか買主が見つからないため、弊社で買い取ることもできます」
との提案がありました。
Aさんは、「早く売却できるなら」
と考え、B社へ不動産を1500万円で売却しました。
ところが、その日のうちにB社は、
その不動産を第三者へ2100万円で転売していたことが判明しました。
Aさんは、
「最初から購入希望者を探してくれていれば、もっと高く売れたのではないか」
「媒介を依頼していたのに、なぜ不動産会社自身が買主になったのか」
と疑問を持ちました。
このような場合、AさんはB社へ責任を問うことができるのでしょうか。

【弁護士からの回答】
不動産会社が自ら不動産を購入し、その後転売すること自体は、
直ちに禁止されているわけではありません。
しかし、売主から売却依頼を受け、媒介業務を行う立場にあった宅建業者が、
自ら買主となって転売利益を得る場合には、
売主への説明や取引の合理性が問題となります。
この点について参考になる裁判例があります。
福岡高等裁判所平成24年3月13日判決では、
不動産所有者から売却相談を受けた宅建業者が、
売主との媒介契約による取引ではなく、自ら買主となる売買契約を締結し、
その後第三者へ転売した事案が問題となりました。
この事案では、宅建業者が売主から不動産を購入した後、
同日に第三者へ転売し、差額を得ていました。

裁判所は、
『宅建業者が、その顧客と媒介契約によらずに売買契約により不動産取引を行うためには、当該売買契約についての宅建業者とその顧客との合意のみならず、媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり、これを具備しない場合には、宅建業者は、売買契約による取引ではなく、媒介契約による取引に止めるべき義務があるものと解するのが相当である。』
と判断しました。
そして、売買契約によるメリットが売主に十分存在するとはいえず、
宅建業者側が転売利益を得るための取引となっていたことから、
宅建業者側の責任を認めました。
もっとも、裁判所は宅建業者が得た600万円全額を損害とはせず、
媒介手数料相当額を控除した金額を損害として認めています。
媒介契約であれば、媒介手数料をとられていたはずなので、
損害としては媒介手数料相当額を控除した金額になります。

【今回のポイント】
売却を依頼する際は、
「媒介契約なのか」「不動産会社自身が買主になるのか」
「その場合の売却価格は適正なのか」
を確認することが大切です。
特に、媒介契約を締結した後に買取へ変更する場合は、
その理由や条件について十分な説明を受けることが重要です。
不動産を売却するとき、
「買取だから安心」「不動産会社に任せれば問題ない」
とは限りません。
確かに不動産会社による「買取」は、売却を早く進められるメリットがあります。
一方で、売主が十分な説明を受けないまま契約すると、
後になって「本来得られた利益を失ったのではないか」
という問題が生じることがあります。
不動産売却では、契約内容だけでなく、
その取引方法自体が適切なのか、きちんと確認するようにしましょう。
※なお、上記事例はあくまで架空のものであり、
実在の人物、団体とは一切関係ありません。











