土地の境界線がはみ出した場合に時効取得されるのか?
2024.03.04
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは。弁護士の松井です。
今回は土地の境界線で争いがある場合に、
取得時効との関係を整理したいと思います
1 境界とは?
土地の境界とは、隣地との境目のことであり、行政上の区画になります。
そして所有権界とは、土地に関する所有権がおよぶ範囲であり、
このふたつが一致すれば問題はありません。
このあたりはなかなか難しいので、わかりやすく図で示してみます。
A土地とB土地が存在していて、細い線が境界線だとします。
境界はあくまで行政上の区画なので見えませんが、
一般的には境界標によってわかりやすくなっています。
境界標をK1とK2とした場合、
A土地とB土地の境界線はK1とK2を結んだ線ということになります。
2 境界線のはみ出し①時効取得成立の場合
先ほど述べたとおり、本来境界線は見えないのですが、
一般的には境界線上に塀を建ててわかりやすくなっている場合があります。
A土地所有者は塀の中のA土地の所有権があると、
B土地所有者は塀の中のB土地の所有権があると思って、
それぞれの土地を使用しています。
この場合に、塀の下にきちんと境界線があれば、
境界(筆界)と所有権界は一致しており問題はありません。
それでは何らかの原因で境界線が実は違う位置にあった場合どうなるでしょう?
例えば、A土地とB土地との境界線が、
塀の下ではなく、より西側の位置(K3とK4を結んだ線)にあったとします。
本来Bの土地はK3とK4を結んだ線まであって、より広いはずなのに、
その途中に塀ができてしまって、使える面積が狭くなってしまっています。
A土地所有者の所有権もK3とK4を結んだ線までしかおよばず、
赤い土地の部分は本来使用できないはずの土地です。
しかし、A土地の所有者が10年もしくは20年間(※)
塀の内側の土地を自分の土地として、使用し続けると、
赤い部分の土地は取得時効によりA土地所有者の土地になってしまいます。
3 境界線のはみ出し②取得時効不成立の場合
今度はA土地とB土地との境界線が、
塀の下ではなく、より東側の位置(K5とK6を結んだ線)にあったとします。
本来Aの土地はK5とK6を結んだ線まであることになり、
B土地所有者の所有権もK5とK6を結んだ線までしかおよばず、
赤い土地の部分に建物を建てたりできないはずです。
取得時効が成立して、赤い部分もB土地所有者の土地になれば、
問題ないですが、期間が足りないなどの理由で取得時効が成立しない場合には、
建物がA土地にはみ出していることになってしまいます。
そうすると、A土地所有者からB土地(建物)所有者に対して、
所有権に基づく妨害排除請求、
つまりA土地上から建物をどかすように請求がされることになります。
B土地(建物)所有者は、建物を壊さないといけないということになれば、
大変困ったことになりますよね。
4 解決の道筋
これまでお話してきたとおり、
隣地との境界の問題を解決していく上で、
まずは土地の境界線を確定させるのが先決です。
もし境界線に争いがあれば、
法務局の筆界特定制度や裁判所の境界確定訴訟を利用することになります。
境界線に争いがないか、もしくは争いがあっても確定できれば、
次に所有権界の話になり、
どちらの土地がどれだけはみ出しているのかわかるので、
自分の土地が他人から時効取得されてしまうのか、
もしくは自分が他人の土地を時効取得するのかという話になります。
【参考記事】