手付金を返してもらう方法
2020.08.31
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは。弁護士の松井です。
今回は手付金を返してもらう方法についてお話したいと思います。
1 はじめに
まず不動産取引の手付金とは、
①契約成立を前提として、
②取引の相手が履行に着手するまで(もしくは手付解除権の行使期限まで)、
③買主は売主に交付した手付金を放棄、売主はその手付金を倍返しすることで、
④契約を無条件に解除できるというものです。
そして、買主側(手付金を交付した側)が手付金を返してもらえる場合について、
❶契約が解除された場合、
❷契約が解除されない場合
でわけてお話しします。
2 契約解除された場合手付金返金があるか
❶の契約が解除された場合、その解除の原因によって異なってきます。
❶-1買主側が手付解除した場合 → 手付金を放棄するので返金されません。
❶-2売主側が手付解除した場合 → 手付金の倍返しなので返金されます。
❶ー3代金未払いなど買主側の事情で解除される場合
→ 手付金としては返金される可能性がありますが、
特約により手付金を違約金としている場合には結局返金されません。
❶ー4引き渡しや登記を怠るなど売主側の事情で解除される場合
→ 返金されます。
❶-5住宅ローンの審査に通らないなどローン特約により解除される場合
→ 手付とは別に契約が白紙に戻るので返金されます。
3 契約解除されない場合手付金返金があるか
❷ー1手付金を代金の内金にするとの特約がある場合
→ 手付金は代金に充当されるので返金されません。
❷-2手付金を代金の内金にするとの特約がない場合
→ 返金されます。
以上のように、色々な場合があり、ご自分がどのパターンなのかご確認下さい。
なお、契約書の特約部分も確認する必要がありますので、ご注意下さい。
4 その他
上記②の履行に着手という部分については、
最高裁昭和40年11月24日判決は
「債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、
客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし
又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」
と判断しています。
売主が不動産を調達する行為は該当しそうですが、
買主が代金を支払うためにお金を借りただけでは、
お金は他にも使えるものですので、該当しないケースもあるでしょう。
手付金に関して、その他のことは以前のブログにも記載しておりますので、
もあわせて一読下さい。
陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介