土地の時効取得をされない(阻止する)ためには?
2019.07.31
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
弁護士の松井です。
今回は土地の時効取得についてお話します。
1 時効取得とは?
時効取得を簡単に説明すると、
そもそも自分のものではないのに、ある一定期間使用していれば、
自分のものになるという制度です。
土地の時効取得は、
自分の土地ではないのに長期間使っていたら、
自分の土地になるという制度です。
よく問題になるのは隣の家との境界ですね。
隣の家の塀がこちらの土地にはみ出しており、
そのまま数十年経ってしまったというような場合、
そのはみ出している部分を時効取得でとられてしまう可能性があります。
かりに隣の人がはみ出している部分は自分の土地ではないと知っていても、
20年間はみ出している状態が続けば、
時効取得の要件を満たすことになります。
知らない場合にはより短い10年で時効取得となります。
2 時効取得の阻止
ただし、時効取得の要件として、
「所有の意思」という、自分の物として扱う意思が必要ですので、
単に土地を借りている場合には、
あくまで他人の土地を使用していることになるため、
どれだけ長期間使用しても時効取得はしません。
よって、時効取得を阻止したい場合には絶対に地代をとりましょう!!
3 時効取得の証明
また、時効取得する側が裁判をする場合には、
①使用を始めた時点と②10もしくは20年後時点で、
使用(占有)している事実を証明しないといけません。
依頼者には①と②時点前後の写真がないか確認してもらいますが、
皆さん当然裁判を見越しているわけではないので、
都合の良い写真はなかなかないですよね。
そんな時は当時の使用方法から使用していた事実を証明できるものを想像します。
例えば、畑として使っていたのであれば、農協関係の資料があったりします。
航空写真なども参考になりますね。
皆さん自分にはあまり関係がないと思われるかもしれませんが、
時効取得は意外と身近な問題です。
隣に家があれば敷地は接しているので常に時効取得の危険があることになります。
隣地との境界上に塀を建てようとしても、
その最初の建て方自体に問題があったり、
樹木の根による土地の隆起により塀が動くなどして、
思いがけず塀が境界上から動いていて、
結果的に時効取得が成立することがあります。
そして、お隣とのことなので、塀が越境していることを気付いていながら、
あまり問題にしたくないという思いからそのまま数十年経ってしまい、
子供の代になってから時効取得の問題が顕在化することにもなりかねません。
このころには占有当時の資料や写真など証拠が紛失していることも多いので、
証明ができなくなってしまうこともありえます。
やはり、何事も早めの対処がおすすめですね。
【参考記事】