「家賃収入でローンはほとんど返せます」と言われてマンションを購入した結果… 不動産投資の甘いシミュレーションに警鐘を鳴らした裁判例を弁護士が解説
2026.07.21
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは。弁護士の松井です。
近年、会社員や公務員の方を中心に、老後資金や節税対策として、
ワンルームマンション投資が勧められることが増えています。
営業担当者から、
「毎月の持ち出しは数千円程度です。」
「家賃収入でローンはほぼ返済できます。」
「将来売却しても、大きく値下がりすることはありません。」
などと説明を受け、購入を決断する方も少なくありません。

しかし、そのような説明を信じて物件を購入した結果、
想定外のローン負担を抱えてしまうケースもあります。
今回は、架空の相談事例をもとに、
不動産投資に関する説明義務が問題となった裁判例をご紹介します。

【相談内容】
建物の所有者(オーナー)Aさんからのご相談。
数年前、Aさんは不動産会社の営業担当者から、
投資用ワンルームマンションの購入を勧められました。

営業担当者は、
「家賃収入でローン返済のほとんどを賄えます。」
「毎月の実質負担は、お小遣い程度です。」
「将来売却するときも、価格が大きく下がることはありません。」
などと説明し、「将来売却プラン」と題する資料を示しました。
その資料では、不動産価格が将来下落したとしても、
その幅はせいぜい10%程度であり、
家賃収入も長期間ほとんど変わらないかのように記載されていました。
Aさんは、「もし状況が悪くなっても、売却すればローンは返済できるだろう」
と考え、金融機関から融資を受けてマンションを購入しました。

しかし、実際には、購入した瞬間から中古物件として扱われるため、
売却価格は大幅に下落していました。
また、家賃収入も当初の説明どおりにはいかず、毎月の持ち出しが続いています。
Aさんは、「営業担当者の説明を信じて購入したが、話が違うのではないか」
と感じています。
このような場合、契約を取り消したり、
損害賠償を請求したりすることはできるのでしょうか。

【弁護士からの回答】
結論からいうと、営業担当者の説明内容や勧誘方法によっては、
契約を取り消したり、損害賠償を請求したりできる可能性があります。
もちろん、不動産投資には一定のリスクが伴います。
価格の変動や空室、家賃の下落などは、ある程度避けられない側面があります。
もっとも、不動産会社が、購入を検討している人に対し、
将来の価格下落や家賃の減少といった不利益な事情を十分に説明しないまま、
現実離れしたシミュレーションを示して契約を勧めた場合には、
法的な問題が生じることがあります。

実際に、東京地方裁判所平成24年3月27日判決では、
不動産会社が投資用マンションを販売する際に、
「将来売却プラン」と題する資料を示し、
不動産価格の下落はせいぜい10%程度であるかのような説明をしていた事案が、
問題となりました。
裁判所は、この資料によって、購入者は、
予想できない急激な不動産価格の下落がない限りいつでも売却できる
と誤信したと認定しています。

また、裁判所は、購入したマンションは中古物件として扱われるため、
実際には、分譲価格の60~70%程度まで価格が下落する可能性がある
にもかかわらず、そのような説明がされていなかったことを重視しました。
さらに、不動産会社が提示したシミュレーションでは、
30年以上にわたり家賃収入がほぼ変わらないことが前提とされていましたが、
裁判所は、そのような資料は購入者を誤認させる要素を多分に含んでいると
指摘しています。
その結果、裁判所は、不動産会社が不利益な事実を十分に説明しなかったとして、
消費者契約法に基づく契約の取消しを認めました。

不動産投資で特に注意すべきポイント
不動産投資を検討する際には、営業担当者の説明をそのまま信じるのではなく、
特に次の点を確認することが重要です。
① 購入直後の売却価格
新築ワンルームマンションは、購入した瞬間に中古物件として扱われるため、
売却価格が大幅に下落することがあります。
「いつでも売却できる」という説明だけではなく、
実際の中古市場の価格も確認する必要があります。

② 家賃収入は将来も維持されるのか
建物が古くなれば、それだけで家賃が下がることになりかねず、
人口減少や周辺環境の変化によっても、家賃が下落する可能性があります。
30年以上同じ家賃収入が続くことを前提にしたシミュレーションには、
相当な注意が必要です。
なぜ家賃が同じ水準で推移するか、担当者に合理的な説明を求めるべきでしょう。
③ 空室や修繕費のリスク
不動産投資では、空室や設備の故障、大規模修繕など、
さまざまな支出が発生します。
「毎月数千円の負担で済む」という説明だけではなく、
将来的にどのタイミングでどのような費用が発生する可能性があるか、
突発的な修繕費などに備えて、一部積立も想定しておくべきです。

【今回のポイント】
・不動産会社が将来の価格下落や家賃減少のリスクを
十分に説明しないまま契約を勧めることがあります。
・現実離れしたシミュレーションによって購入者が誤信した場合、
契約を取り消せる可能性があります。
・「将来売却できる」「毎月の負担はわずか」といった説明だけで、
判断するのは危険です。
・不動産投資では、家賃下落や空室、売却価格下落、将来の負担などを含めて、
色々な検討することが重要です。
不動産投資そのものが悪いわけではありません。
しかし、「家賃収入だけでローンを返済できる」「将来も大きく値下がりしない」
といった説明だけを信じて契約してしまうと、
想定外の負担を抱えることになりかねません。
特に、投資シミュレーションは、どのような前提条件で作成されているのか、
慎重に確認する必要があります。
不動産会社から示された資料に少しでも疑問を感じた場合には、
契約書に署名する前に、専門家へ相談することをおすすめします。
※なお、上記事例はあくまで架空のものであり、
実在の人物、団体とは一切関係ありません。
【参考記事】











