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陽なた法律事務所の弁護士が綴る、日常や法に関する豆知識ブログです。

外国人買主への重要事項説明は外国語で行う必要がある? ~マンション売買をめぐる裁判例から考える~

2026.06.04

執筆者 陽なた法律事務所 弁護士  松井竜介

 

こんにちは。弁護士の松井です。

 

近年、外国人の方が日本で不動産を購入したり、

賃貸物件を借りたりするケースが増えています。

一方で、言語や文化の違いから契約内容について誤解が生じ、

後日トラブルになることも少なくありません。

 

今回は、外国人との不動産取引における重要事項説明について、

架空の相談事例をもとに解決方法や裁判例をご紹介します。

 

【相談内容】

建物の所有者兼不動産業者A社からのご相談。

 

当社ではマンションや戸建て住宅の売買を行っています。

 

最近は外国人のお客様からの購入相談も増えており、

日本語が十分に話せない方と契約する機会もあります。

 

契約時には通訳を同席させていますが、

後日「契約内容を理解していなかった」「重要事項説明が不十分だった」

と言われることがないか不安です。

 

外国人の買主に対しては、外国語版の契約書や重要事項説明書を

用意しなければならないのでしょうか。

 

また、買主側が用意した通訳を介して説明した場合でも、

説明義務違反を問われる可能性はあるのでしょうか。

 

 

【弁護士からの回答】

結論から申し上げると、現行法上、外国人に対して、

必ず外国語で重要事項説明を行わなければならないという法的義務はありません。

 

この点について参考になる裁判例があります。

 

東京地裁令和3年3月11日判決の事案です。

 

ある分譲マンションの購入者である外国人買主が、

「駐車場が確保されると説明された」

「日本語のみで重要事項説明が行われたため契約内容を十分理解できなかった」

などと主張し、売主業者に対して損害賠償を請求した事案です。

 

この事案では、買主側が自ら通訳を同行させており、

売主側はその通訳を介して重要事項説明を行っていました。

 

 

裁判所は、

 

  • 外国人が自ら選任した通訳の正確性については、原則として本人がそのリスクを負うべきであること
  • 宅建業者が通訳内容の正確性や買主の理解度まで確認することは困難であること
  • 宅建業法上、日本語を理解しない外国人に対して外国語で重要事項説明を行う義務までは定められていないこと

 

などを理由として、売主側の説明義務違反を否定し、

買主側の請求を棄却しました。

 

もっとも、この判決の意義は「外国人との契約では日本語のみで十分」

というものではありません。

 

外国人との取引では、言語だけでなく、

法制度や商慣習の違いによって認識のズレが生じることがあります。

トラブルとなれば対応に相応の負担が生じますし、

信用を失うことにもなりかねません。

 

そのため、法的義務がないとしても、

トラブル防止の観点からはできる限り丁寧な説明を行うことが重要です。

 

例えば、

 

  • 外国語の説明資料を準備する
  • 信頼できる通訳を利用する
  • 説明内容をメール等で記録に残す
  • 契約内容について理解しているか確認する

 

といった対応をしておく必要がありそうです。

 

【今回のポイント】

① 外国人に対して外国語で重要事項説明を行うことは、

現時点では法律上の義務とはされていません。

 

② 買主や借主が自ら通訳を用意した場合、

その通訳の正確性に関するリスクは原則として本人が負うと考えられています。

 

③ もっとも、外国人との不動産取引では、

言語や文化の違いによるトラブルが起こりやすいため、

契約前から十分な意思疎通を図ることが重要です。

 

④ 「法的義務がない」ことと「トラブルにならない」ことは別問題です。

後日の紛争防止のためにも、できる限り丁寧な説明と記録化を心掛けましょう。

 

ご心配であれば、より詳細なご相談をおすすめいたします。

 

※なお、上記事例はあくまで架空のものであり、

実在の人物、団体とは一切関係ありません。

 

当事務所への無料相談受付はこちらまで

 

【参考記事】

不動産業者の責任(重要事項説明義務など)について

 

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