台風でマンションが漏水!貸主・借主どちらが責任?弁護士がわかりやすく解説【実例付き】
2025.09.09
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介

台風の翌日、天井からポタポタと水が…。
「これって上の階の人のせい?それとも大家さんの責任?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
台風などの自然災害による漏水トラブルは、原因が複雑で、誰が修理費を負担するのかが分かりにくいものです。
この記事では、不動産トラブルを多く手掛ける弁護士が、実際の事例をもとに「台風で起きた水漏れの責任の所在」と「対応の流れ」をわかりやすく解説します。
台風シーズンに増える「漏水トラブル」
近年、九州地方では大型台風の上陸が増えています。
そのため「台風のあとに天井から雨漏りした」「管理会社が修理してくれない」といった相談も多く寄せられています。
特に築年数の古いマンションでは、排水口の詰まりやシーリング材の劣化が原因で、上階や共用部分からの漏水が起きるケースが目立ちます。
自然災害とはいえ、放置すれば床材や壁紙の張り替えが必要になることもあり、被害は小さくありません。

相談事例:台風の雨で天井から水漏れ
福岡市に住むAさんは、賃貸マンションの5階に入居中。
ある日、大型台風の通過後に天井から水が滴り落ち、部屋の一部がびしょ濡れになりました。
家具も傷み、壁紙がはがれてしまい、Aさんは管理会社へ連絡。
しかし、「自然災害によるものなので、責任の所在は判断が難しい」と言われ、修理費の負担でトラブルに。
このように「誰が費用を負担するのか」が明確でないケースは少なくありません。

台風による漏水トラブルの主な原因と責任者
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原因 |
主な責任者 |
理由 |
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台風・豪雨などの自然災害 |
原則として責任なし(不可抗力) |
誰にも過失がないため |
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借主の清掃怠慢・排水口の詰まり |
借主 |
「善良な管理者の注意義務」(民法第400条)違反 |
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建物の老朽化・構造欠陥 |
貸主または管理組合 |
「修繕義務」(民法第606条)に基づく責任 |
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共用部分(屋上・外壁など)の破損 |
管理組合 |
共用部分の維持管理責任 |
このように、まず「原因の特定」をすることが、正しい対応の第一歩です。
借主に求められる「善管注意義務」とは?
賃貸契約を結ぶと、借主には「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」が課せられます。
これは、「自分の持ち物よりも丁寧に扱う義務」のことです。
たとえば、バルコニーの排水口に落ち葉やゴミが詰まって水があふれた場合、
「定期的に清掃していれば防げた」と判断され、借主が修理費を負担するケースもあります。
【参考判例】東京地裁令和5年2月3日判決(善管注意義務違反)
判例全文(裁判所公式PDF・裁判例集)
借主が排水口清掃を怠った結果、漏水が発生し、善管注意義務違反として損害賠償を命じられました。
貸主・管理組合の「修繕義務」
一方、建物の構造や設備の不具合が原因で漏水が発生した場合、修理を行うのは貸主や管理組合の責任です。
民法第606条(e-Gov法令データ提供システム) では、次のように定められています。
「貸主は、賃借物を使用収益に適するように維持する義務を負う。」
つまり、借主が触れられない部分(屋上・外壁・配管など)の不具合による漏水は、
貸主または管理組合が修繕費を負担するのが原則です。
保険で補償されるケースもある
台風や豪雨による漏水は、火災保険(風災補償・水災補償)でカバーされる場合があります。
また、借主の家具や家電が被害を受けた場合は、家財保険で補償されることもあります。
確認すべきポイント
- 貸主:建物火災保険の補償内容(風災・水漏れ対象か)
- 借主:家財保険の補償範囲(家具・家電など)
- 共用部分が原因なら:管理組合の共用部保険が使えることも
被害が出たら、すぐに写真で記録 → 保険会社 → 管理会社の順で連絡しましょう。
実際にあった弁護士対応事例
【ケース①】管理組合の修繕負担が認められた例
台風の雨が屋上から浸水し、借主の部屋の天井が濡れたケース。
調査の結果、屋上の防水シートの劣化が原因で、管理組合が修繕費を全額負担することで解決しました。
【ケース②】借主の注意義務違反と認定された例
別のケースでは、バルコニーの排水口が落ち葉で詰まり、雨水が室内へ流れ込みました。
借主が「自然災害だから仕方ない」と主張しましたが、定期的な清掃を怠ったことが明らかになり、修理費の一部を自己負担する結果となりました。
このように、過失があるかどうかで責任の有無が大きく変わります。
台風と保険の関係で誤解しやすいポイント
台風被害と聞くと「火災保険で全部直せる」と思われがちですが、実際には注意が必要です。
火災保険には「風災」「水災」「漏水」など複数の補償がありますが、
- 老朽化による雨漏り
- 経年劣化による排水管の破損
は、補償対象外になる場合があります。
一方で、突発的な強風や飛来物による損傷などは補償されることが多いです。
契約時に「風災補償」「水災補償」「漏水補償」の有無を確認しておきましょう。
被害時に揉めないための「記録の残し方」
台風被害の修理や保険申請でトラブルになりやすいのが、「証拠が残っていない」ケースです。
- 写真は被害状況がわかるように複数角度から撮影
- スマートフォンのタイムスタンプ機能を利用
- 管理会社や貸主への連絡は、メールやLINEで履歴を残す
これらを行うことで、後から「言った・言わない」のトラブルを防げます。
万が一法的対応が必要になった場合も、こうした記録が大きな力になります。
トラブルを防ぐための「日常点検リスト」
賃貸物件では、台風の被害を完全に防ぐことはできませんが、日頃の点検で被害を最小限にできます。
【月に1回チェックしたい項目】
- バルコニーの排水口にゴミや落ち葉が溜まっていないか
- サッシやゴムパッキンにひび割れがないか
- エアコンのドレンホースから水漏れしていないか
- 室外機の周囲に風で倒れそうな物がないか
小まめな確認を行うことで、台風被害を防ぎ、貸主や管理会社との信頼関係も築けます。
トラブル発生時の対応ステップ
- 被害状況を写真・動画で記録
- 管理会社または貸主へすぐ連絡
- 保険会社に申請(証拠提出)
- 原因調査を依頼(業者・管理組合)
- 修理・費用負担の判断を確認
感情的にならず、手順を守ることがスムーズな解決につながります。
よくある質問(FAQ)
Q1:台風で雨漏りが起きた場合、借主が修理費を払う必要はありますか?
A:自然災害が原因で借主に過失がない場合、基本的には貸主や管理組合が修理を行います。
Q2:上階の人のせいで水漏れした場合、どうすれば?
A:管理会社に報告し、原因を調査してもらいましょう。上階の住人に過失がある場合は損害賠償請求も可能です。
Q3:保険でどこまで補償されますか?
A:火災保険(風災補償)で建物の修理、家財保険で家具・電化製品の損害を補償できる場合があります。
関連記事
台風や漏水などの不動産トラブルは、原因によって対応が変わります。
以下の記事もあわせて読むことで、より深く理解できます。
排水管の詰まりで漏水した時どうするか 漏水事故後の対応について
まとめ
- 台風による漏水は、原因の特定が最重要
- 借主に過失があれば修理費を負担する可能性あり
- 建物の劣化や構造不良なら貸主・管理組合の修繕義務
- 火災保険や家財保険の補償範囲を確認しておくと安心
- 記録・点検・早めの報告がトラブル防止のカギです
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