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陽なた法律事務所の弁護士が綴る、日常や法に関する豆知識ブログです。

購入予定の物件で死亡事故、自殺か自然死で違いがあるの?

2019.10.30

執筆者 陽なた法律事務所 弁護士  松井竜介

 

弁護士の松井です。

 

もしあなたがマンションを買った後に

そのマンションで過去に人の自殺事件があったことはわかったとしたら……

当然良い気持ちはしないですよね。

この場合には、

売主に対する契約の解除や損害賠償請求を検討することになります。

ここで問題となるのが、自殺事件が「瑕疵」にあたるかどうかです。

「瑕疵」とはその物が通常有する性質を欠いていることと言われます。

(改正民法では「契約の内容に適合しないもの」になります。)

 

マンションの通常有する性質を欠いているというのはわかりにくいですが、

裁判例では「住み心地の良さ」を欠いていると認められるような状態の場合に

「瑕疵」が認められるようです。

今のべた「瑕疵」ですが、物理的にマンションが壊れているわけではないので、

物理的瑕疵に対比して「心理的瑕疵」と呼ばれます。

 

それでは、自殺事件があったマンションは、

「住み心地の良さ」を欠いたものといえるのでしょうか?

この判断はケースバイケースになります。

 

裁判例では、自殺事件後数年程度しか経過していない場合には、

瑕疵があると認められているものが多くあります。

やはり、数年前に自殺事件があったばかりだというのは、

「住み心地の良さ」を欠いていると言っても違和感はないかもしれませんね。

 

他方で、自殺事件後数年程度しか経っていないにもかかわらず、

瑕疵と認められなかったものもあります。

この中には、建物自体はすでに取り壊されていたという事情が、

考慮されているものがあります。

 

では自殺ではなく、殺人事件や自然死だった場合はどうでしょうか?

殺人事件の場合には、

人は恐怖を感じるでしょうから、

自殺に比べてより「住み心地の良さ」を欠いたものと言えそうですね。

実際に、数十年前の殺人事件で建物はすでに取り壊されていても、

「瑕疵」と認めている裁判例があります。

 

自然死の場合には、

「住み心地の良さ」を欠いているとは言いづらいとは思いますが、

発見されたのが遅く、悪臭が発生していたなどの状況があれば、

瑕疵にあたる場合も出てくるでしょう。

 

以上の話は、

宅地建物取引業者(宅建業者)の重要事項説明にも関係するところです。

もし瑕疵にあたるような死亡事故を説明されていなかった場合には、

宅建業者への責任追及ということも考えられますので、

宅建業者も可能なかぎり物件を調査して、

死亡事故があったことが判明した場合には、

きちんと説明をするように心がけて下さい。

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