賃貸借契約が解除される場合とは?信頼関係破壊の法理
2023.09.29
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
1 はじめに
こんにちは。弁護士の松井です。
賃貸借契約の終了原因のうち、
解約申入れや更新拒絶により契約が満了する場合については、
すでに当ブログ(※)で説明していますので、
今回はそれ以外の理由による契約解除のお話をしたいと思います。
2 借主の賃料不払い
と規定されていますので、借主は賃料の支払い義務があることになり、
賃料を支払わないことは債務不履行となって、契約解除の理由となります。
3 用法遵守義務違反、無断増改築
また、民法上、
と規定しているため、借主が無断で建物を増改築したような場合には、
契約解除の理由となります。
4 賃借権の無断譲渡、無断転貸
さらに、民法上、
と規定があり、借主が無断で賃借権を譲渡したり、
無断で転貸した場合(いわゆる又貸し)も、契約解除の理由となります。
5 信頼関係破壊の法理、背信行為論
これまで説明してきた契約解除の理由ですが、
たとえば、賃料不払いが1回でもあれば、契約は解除されてしまうのでしょうか?
昭和27年4月25日最高裁判決では、
『およそ、賃貸借は、当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、
賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切つて、賃貸借関係の継続
を著しく困難ならしめるような不信行為のあつた場合には、相手方は、賃貸借を将
来に向つて、解除することができるものと解しなければならない』
と判断していて、信頼関係が破壊されているかどうかが重要となっています。
よって、「1か月の賃料不払い」だけを理由として、
契約解除をするのは難しいことになります。
また、昭和39年7月28日最高裁判決では、
賃料1,200円の事案で、3か月分に満たない3,000円の滞納では、
解除を認めていないので、解除理由として3か月以上の滞納が目安になります。
6 まとめ
賃料不払いなどがあっても、すぐに契約解除となるわけではありません。
他の事情も含めて、信頼関係が破壊されているかどうか、
慎重に判断する必要があります。