原状回復費用を請求された。いくら払えばいいの?
2021.01.29
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは。弁護士の松井です。
賃貸マンションを退去する際に原状回復費用を請求されたことはありませんか?
高額な費用を請求されて困ったという場合もあるかもしれません。
今回はその原状回復の話です。
1 原状回復とは
そもそも原状回復とは何でしょうか?
原状は、初めの状態やもとの状態という意味ですので、
文字通りであれば、
原状回復は初めの状態やもとの状態に戻すこと、
つまり部屋を入居当時の状態に戻すことになります。
それでは法律上はどうなっているかというと、
と定められています。
簡単に言えば、入居者が原状回復すべき部分とは、
借りた状態から発生した損害 - 通常の使用による損耗や経年劣化部分
ということになります。
これは通常損耗や経年劣化は、本来賃料に折り込み済みであり、
家主が負担すべきとの考えがあるからです。
国土交通省作成の原状回復に関するガイドラインにおいても、
原状回復を同様に記載していますので参考になります。
追記として、令和5年3月に
『「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料 』
が公開されており、ガイドラインの解説や原状回復の事例が
紹介されていますので、実務上参考になるかと思います。
【参照】
2 具体的に
原状回復のことがわかったところで、
具体的な費用がどうなるのか見ていきたいと思います。
以下の図をご覧下さい。
Aは建物の現在の価値、Bは入居者の故意過失による価値減少分、
Cは自然損耗や経年劣化による価値減少分を示しています。
Cは原則として家主負担なのは先ほど述べたとおりです。
そして、Bは入居者負担になります。
例えば、部屋の価値Aが入居時200万円で現在0の場合、
入居者の故意過失分Bが60万円、
自然損耗や経年劣化分Cが140万円、
この場合には入居者は原状回復費用として、
60万円は支払わないといけません。
3 交渉のススメ
これまで述べてきたとおり原則として、
自然損耗や経年劣化による価値減少分は家主負担となります。
ただし、この部分を入居者負担とする特約がある場合もあり、
家主からは200万円をそのまま請求される場合があります。
この場合にはまずは契約書の記載内容(特約部分)を確認してみて下さい。
また、そもそも60万円や140万円がそもそも適正な金額なのか
という問題もあります。
原状回復費用が請求される場合、業者の見積書がついてくることがありますが、
この見積書が適正な相場の範囲内なのかは検討する余地があります。
いずれにしても入居者側、家主側で言い分が食い違うことも多いので、
家主からの一方的な請求に応じてその請求金額を支払ったり、
または入居者からの支払い拒否ですぐに請求を諦めたりせず、
事実確認や十分な交渉をきちんと行うようにして下さい。