境界(筆界)と所有権の違いとは?
2020.10.22
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは。弁護士の松井です。
今回は土地の境界(筆界)と所有権の違いについて、お話したいと思います。
1 それぞれの違い
土地の境界とは、隣地との境目のことであり、行政上の区画になります。
区画といっても目に見えないので、土地を売る場合には境界の確定のために、
測量を行い境界を確定することがありますが、
本来境界は行政上の区画として、動いたりするものではなく、
そこにずっと存在しているものなので、
正確には確定というよりも「発見」すると言った方が良いのかもしれません。
他方で所有権は、モノを支配して使用・有益・処分できるという権利であり、
土地の所有権であれば、土地を自由に使うことができ、
例えば土地を貸して地代をとったり、売却したりできる権利になります。
このように、境界は行政上の区画、所有権は権利と全く違うものになりますが、
境界の隣地との境目という部分と所有権が及ぶ範囲という部分は、
重なる部分が出てきます。
2 隣地との境目
まず、次の図をご覧下さい。
Aの土地、Bの土地、Cの土地それぞれの周りの細い線が境界になります。
そして、AとBの土地、AとCの土地、BとCの土地の境目の太い線は、
境界線上の塀を表しています。
この場合、それぞれの土地所有権が境界内に及ぶことについて、
特に問題はないので、境界と所有権の及ぶ範囲は一致することになります。
※赤い部分がAの土地所有者の所有権の及び範囲になります。
ただ、次の場合はどうでしょうか。
これもA、B、Cそれぞれの土地の周りの細い線が境界です。
ただし、今回の場合はAの土地所有者がBとCの土地に入り込んだ位置に、
無断で塀をついてしまっています。
Aの土地所有者が塀をついてからまだ数年しか経っていないのであれば、
BとCの土地所有者は、Aの土地所有者に塀の撤去を求めることが可能でしょう。
しかし、塀をついてから条件により10年か20年経過してしまうと、
Aの土地所有者は塀で囲んだBとCの土地の一部の所有権を、
時効取得することになります。
そうすると、Aの土地所有者の所有権は、
Aの土地全部とBとCの土地の一部に及ぶことになり、
境界と一致しないことになります。
※赤い部分がAの土地所有者の所有権の及び範囲になります。
3 ズレを一致させるためには?
上記で説明したとおり、境界と所有権が一致しない場合が出てきますが、
境界は以前と同じ状況のままになりますので、
このズレを一致させるという話が出てきます。
Aの土地所有者としては、BとC土地から一部を切り離して、
自分名義の土地にしていくということになります。
一般的な流れとしては、
①それぞれの土地の測量をして、境界と所有権の及ぶ範囲を確定させる。
➜ズレがなければ良いのですが、ズレが生じている場合には争いが出てきます。
②Aの土地所有者がBとC土地の一部の所有権を確定させる。
➜ズレている部分の所有権が誰にあるかという話です。
③BとC土地の一部を分筆して、それをAの土地所有者の名義にするか合筆する。
➜ズレを調整することになります。
①と②はBとCの土地所有者の同意があれば、特に問題はないですが、
BとCの土地所有者は土地をとられることになるので、
快諾してくれることはあまりなく、裁判になることもあり得ます。
逆にBとC土地所有者は、
すぐに塀の撤去を求めたり地代をとるなどして、
時効取得を阻止するようにしましょう。
【参考記事】