無断駐車や迷惑駐車に対する対応
2020.07.31
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは。弁護士の松井です。
今回は無断駐車や迷惑駐車に対して、
どのような対応が考えられるかお話ししたいと思います。
1 駐車している相手がわかる場合
土地所有者Aさんが、月極駐車場として、
Bさんに土地の一部を貸したものの、
駐車料金を全く払ってくれないから、
契約を解除して、他の人に貸したいという相談があったとします。
この場合、契約書にBさんの住所は記載されているはずなので、
Bさんの住所宛に駐車料金の催告書兼契約解除の通知書を送ることになります。
Bさんから滞納駐車料金が支払われ、車両も他へ移動してくれるのであれば、
特に問題なく事件終了となります。
ただし、Bさんから何も連絡がなく、
車両もそのまま放置してある場合には困ったことになります。
そもそも催告書兼解除通知書が届いていないのであれば、
契約解除もできていないことになりますので、
裁判上で契約を解除して、車両を撤去してもらうことになってしまいます。
催告書兼解除通知書が届いていたとしても、何も回答がない以上は、
やはり裁判をするしかなくなります。
裁判をする場合に困るのが車両の所有者が、
駐車場の契約者と違う場合です。
なぜ困るかというと、
裁判では、
【契約を解除したから駐車場の車両を撤去してくれ】
という主張をすることになりますが、
相手が裁判に出てこなかったり、開き直られた場合には、
裁判で勝っても車両は駐車場に置き去りのままです。
そして、車両の所有者と契約者が一致していれば、
その車両の強制執行(ここでは売却すること)により、
結果的に処分できますが、所有者が違えばこの方法がとれないことになります。
車両をカーローンなどで購入している場合には、
所有者(車両販売業者など)と契約者(使用者)が違うことは、
よくあることなので裁判前にまずは車検証を確認する必要があります。
所有者と契約が異なる場合には、
所有者にも連絡をして車両の撤去をお願いすることもあります。
2 駐車している相手がわからない場合
今度は、土地所有者Aさんが、
土地をコインパーキングとして使っており、
誰かが、そのコインパーキングに数か月間など長期間車両を放置したとします。
この場合には月極駐車場と違い契約書を作成していないので、
まず、【誰に対して】どのような請求をしていくのか問題となります。
そこで、放置してある車両のナンバーをもとに、
車検証を取得する作業が必要になります。
これは月極駐車場の場合であっても、
もし車検証のコピーをとっていなければ裁判前には必要な作業です。
ただし、月極駐車場の場合には、請求する相手が契約書上わかっているので、
まずは請求してみて任意に車両を撤去してくれる可能性があり、
そうするとあえて車検証を取得する手間はありません。
他方で、コインパーキングではそもそも誰に請求するかもわからないので、
最初に車検証を取得して、所有者や使用者を確認するということになります。
弁護士にご依頼頂ければ、車検証の取得は可能ですが、
ある程度の費用(実費だけでも数千円、弁護士への報酬別)と
時間(2週間~1か月程度)がかかってしまいます。
誰に対して、請求するかが決まれば、
そのあとの処理は月極駐車場の場合と同じです。
3 対策として
月極駐車場に契約者以外が無断駐車した場合や、
コインパーキングに車両を放置された場合には、
事前に何らかの対策をとることはなかなか難しいでしょう。
車両を放置したのは自分ではないという言い訳をさせないために、
監視カメラを設置しておくのは良いかもしれません。
少なくとも月極駐車場の契約者との関係では、
事前に情報を把握しておくことで、余計な手間が省けて、
より円滑な事件処理が可能となりますので、
駐車場の契約時点で相手の運転免許証や車検証のコピーを
必ず入手しておくことをおすすめします。
なお、駐車場の契約書では連帯保証人をとっていない場合が多いと思いますが、
リスクを回避するためにも可能であれば、連帯保証人をとって下さい。
陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介