民法改正で連帯保証はどう変わったか?
2020.06.05
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
こんにちは。弁護士の松井です。
令和2年4月1日から改正民法が施行されています。
そこで民法改正でこれから不動産に関する契約がどう変わっていくのか、
話していきたいと思います。
まず第1回目は連帯保証についてです。
①連帯保証とは?
よく「連帯保証人にはなるな」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、
なぜ連帯保証人になってはいかないのかというと、
例えばお金を借りた人(借主)がいて、その連帯保証人になった場合には、
その借主と同じような立場になってしまうからです。
貸主が借主ではなく最初から連帯保証人に返済を求めてきても、
お金を支払わなければならないことになります。
まずは「借主のところに行ってよ」と言えないわけですね。
これは民法上催告の抗弁権がないことによるものです。
②民法改正の内容
今回の民法改正で連帯保証について大きく変わったところは、
根保証契約の極度額(上限)を定めなければならなくなった点でしょうか。
根保証契約とは保証する額が定まっておらず、
保証する金額が増える可能性のあるものになります。
マンションの賃貸借契約の連帯保証がわかりやすいでしょう。
マンションの賃貸借契約で保証するものは滞納家賃などですが、
滞納家賃は最初からいくらになるかわかりませんし、
滞納が続けば増えていくものですよね。
例えば、家賃5万円のマンションの賃貸借契約の連帯保証では、
連帯保証人は滞納状況が数年続いて数百万円になっても、
支払いをしなければならなかったですし、
マンションの貸主も連帯保証人からとれると見込んで滞納状況を、
しばらく放置するということもあり得ました。
民法改正で、この賃貸借契約の連帯保証で上限を定めるということは、
連帯保証人からすれば、保証する範囲が明確になるので安心ですし、
マンションの貸主も上限以上には取れないので、
滞納状況を漫然と放置することはなくなるものと思われます。
例えば、上記の家賃5万円の例で上限を6か月分の30万円と定めた場合、
連帯保証人は最大でも30万円支払えば良いですし、
貸主は連帯保証人からは30万円しかとれないので、
滞納家賃の合計額が30万円になる前に、
滞納状況を解消する対応をしていくことになります。
③保証の上限
上限をかなり高額にしておけば良いのではないかという考えもあると思います。
先ほどの例で家賃5万円なのに上限を1000万円にしておくということですね。
しかし、これでは上限を設けた意味がありませんので、
あまりに高額な上限は無効になるのではないかと思われます。
どれほど高額であれば無効になるのかは、
今後の実務や裁判例の蓄積を待つしかないですね
家賃滞納を理由として賃貸借契約解除の目安は、
だいたい3か月程度ですので、
それから大きく離れない範囲が無難かと思われます。
④その他追加されたもの
それから貸主の義務として、
連帯保証人から滞納状況など情報開示の請求があった場合には、
応じなければならなくなりました。
かと言って連帯保証人であるか確認もせずに、
電話だけで安易に回答してしまうと個人情報漏洩などと言われかねませんので、
今後は情報の取り扱いにも一層の注意が必要ですね。
陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介