建物所有者からの立退請求に対して、提示額の3倍の立退料を得た事例
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
ご相談内容
【マンションの1室でとある事業を行っている経営者Aさんからのご相談】
マンションの1室を月6万円の家賃で借りて、
とある事業を行っていましたが、
今回マンション所有者Bさんから、マンションの老朽化を理由として、
契約更新を拒絶されて、立ち退きを要求されています。
急な話でどうすれば良いか困っています。
解決までの道筋
①Aさんから委任を受けることにして、
契約書の内容とこれまでの経緯を改めて確認したところ、
建物の法定耐用年数は50年だが、今回の築年数は40年程度であった。
②Bさんに対して、実際にAさんは
建物を仕事で問題なく使っているし、
築年数も老朽化しているとまではいえないため、
立ち退く理由がない旨を文書で通知した。
③BさんがAさんに対して、建物明渡訴訟を提起した。
訴状には、やはり建物の老朽化が明渡の理由と記載され、
借地借家法第28条の正当の事由(※)を補完する要素として、
財産上の給付(立退料)100万円を支払うと主張されていた。
④Aさんの代理人として、答弁書を提出。
訴状に対する反論として、建物が老朽化しているとまではいえないこと、
引っ越し費用200万円などを概算し、立退料100万円は低額すぎると主張。
⑤その後裁判が続き、裁判所から和解金300万円の提案があった。
⑥Aさんの早期に解決したいとの意向もあり和解成立。
解決のポイント
・今回はマンションの1室で事業を行っていたものの、
単なる事務所という扱いだったため、
借地借家法第28条の「賃借人が建物の使用を必要とする事情」
について強く主張できない上、
営業補償というものがあまり算出できなかったこともあって、
もともと高額な立退料を請求できる事案ではなかった。
かりに、今回の事業が、飲食店で、
その地域で、ある程度認知されているという事情があれば、
賃借人にとって有利な事情になったものと思われる。
・それ以外については、引っ越し費用などの見積書を提出して、
明け渡しにかかる実費を正確に提示することで、
その引っ越し費用+αを確保できた。
お客様の声
急に立ち退きを要求されて不安でしたが、
弁護士さんに間に入ってもらって安心できました。
結果的に建物を明け渡すことになりましたが、
きちんと引っ越し費用を払ってもらえたので、
新しい事務所を構えることができて良かったです。