家賃は払っているのに水道料金は未払い…解除できる?実際の事例で解説
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
― 裁判と和解で複数の問題を一挙に解決したケース ―
今回は、マンションを所有する Aさんから寄せられた、
「水道料金の滞納」に関するご相談をご紹介します。
家賃は支払われているにもかかわらず、水道料金のみが 2 年以上滞納され、
総額は数十万円に。
このような状況で契約解除は認められるのでしょうか。

■ご相談内容
Aさんは自身が所有する「甲マンション」の一部屋を、
B さんに賃貸していました。
ある時期の漏水をきっかけに、水道料金だけが、
長期にわたり滞納されるようになったとのことです。
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家賃 …… 滞納なし
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水道料金 …… 2年以上滞納、総額数十万円
家賃を払っている以上、明渡請求や契約解除が認められるのか、
不安との相談でした。

解決までの道筋
① 水道料金の性質と「契約違反」にあたるか
水道料金の扱いは物件によって異なり、大きく次の2類型に分かれます。
(1)借主が水道事業者と直接契約するタイプ
→ 滞納はあくまで借主と水道事業者の問題で、賃貸借契約違反にはならない。
(2)管理組合が水道事業者と一括契約し、区分所有者が立替払を行うタイプ
→ オーナーが借主の分を立て替えるため、支払わないことは
「賃料その他の負担金の不払い」にあたり契約違反となる。
今回は 後者の方式 であり、
・滞納期間が長期
・金額も高額
であったため、信頼関係が破壊されていると評価される可能性が、
高いと判断しました。
② 「信頼関係破壊」についての裁判所の考え方(判例)
賃貸借契約の解除が認められるかどうかは、
「賃貸人・賃借人の信頼関係が破壊されたか」 によって判断されます。
代表的な判例として、
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最判昭和28年9月25日(信頼関係破壊法理の基礎となる判例)
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最判昭和39年7月28日(滞納額が低額などの事情から解除できなかったケース)
などがあります。これらに共通するのは、
滞納額・滞納期間・支払意思の有無・立替負担の有無などを総合的に考慮する
という点です。今回のように
・長期間
・高額
・オーナーが立替負担をしている
という事情があれば、「信頼関係は破壊されている」と評価されやすい状況です。
③ 内容証明による請求
まず Bさんに対し、水道料金の支払いと期限を通知し、
支払いがなければ賃貸借契約を解除する旨を内容証明郵便で送付しました。
しかし、郵便物は届かず返送されてしまいました。
住民票の住所も変更されておらず、これ以上の調査は困難だったため、
裁判に進むことになりました。

④ 裁判での展開
訴状は無事 Bさんに届きましたが、実は Bさんはすでに 無断退去 していました。
そのため、建物明渡請求は取り下げ、
残った 水道料金の支払請求 のみを継続しました。
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Bさんの反論 → 特になし
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判決 → Aさんの全面勝訴
しかし、Bさんは控訴し、第2審では突然「敷金返還」を主張してきました。
原状回復のガイドラインの観点から、一部返還義務が発生する可能性もあるため、
再度の訴訟リスクを回避する目的で、最終的に 請求額を約10万円減額して、
和解し、全体の紛争を一括で終結させました。

■解決のポイント
① 水道料金でも、長期間・高額なら契約解除が認められうる
最高裁判例が示すとおり、滞納の金額・期間等から
信頼関係が破壊されていると認められれば解除は可能 です。
② 訴訟によって状況が明らかになり、結果的に解決が前進
訴状が届いたタイミングで無断退去が判明し、
明渡しの問題が早期に消えたのは大きなメリットでした。
③ 将来紛争のリスクを抑えるため「合理的な譲歩」も選択肢
敷金返還で別訴を起こされるリスク等を考慮し、
一定の譲歩で一挙に解決する戦略 が依頼者にとって、
最も負担が少ないケースでした。
■ まとめ
水道料金の扱い方ひとつで「滞納が契約違反となるかどうか」は、
大きく変わります。今回のケースでは、
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管理組合方式であったこと
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長期・高額の滞納
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オーナーの立替負担
などの事情から、信頼関係破壊が認められ得る状況でした。
水道料金・共益費・電気料金など「家賃以外の滞納」でお困りの方も、
ぜひ早めに専門家へご相談ください。
お客様の声
水道料金の滞納だけだったので、明渡が認められるか心配でしたが、
松井先生にお願いしたことで、スムーズに話が進み、
すべて解決できて、新しい入居者も決まり、本当に良かったです。












