定期建物賃貸借契約書を作成して、契約締結後、無事終了した事例
執筆者 陽なた法律事務所 弁護士 松井竜介
ご相談内容
【倉庫を所有しているAさんからのご相談】
現在、誰も使っていない建物を所有しているのですが、
今回Bさんがその建物を事業で使いたいと言っています。
法律のことは全くわからないのですが、
短期間であれば構わないと思っていますし、
立ち退き料なども払いたくないので、きちんとした契約書を作ってほしいです。
解決までの道筋
➀契約の種類の選択
Aさんから希望を聴取。
契約期間は5年程度を希望とのこと、
立退料を支払わないようにするためにも、
単なる建物賃貸借契約ではなく、
借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約を選択することにした。
②契約内容の明確化
賃料額については、当事者双方で争いはなかった。
退去時の原状回復義務も明示することにした。
倉庫内に一部故障で使用できない設備があり、それは契約の対象外とする。
敷地も一部駐車場として使用を許可する。
③現地確認
原状回復の範囲の確定、
契約対象外の物や敷地を特定するためにも、現地調査を実施。
建物の図面を確認しながら、外観や室内の写真を撮影した。
④契約書作成
Aさんの希望や現地調査の内容をもとに、
定期建物賃貸借契約書を作成。
現地調査時に撮影した写真を契約時の室内の状況として添付。
⑤契約立ち合い
AさんとBさんの契約時に同席。
契約書の内容を説明した。
内容については双方合意できたので双方署名押印。
同時に借地借家法第38条第3項に規定する書面も説明の上で、
Bさんに署名押印してもらう。
3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
⑥契約後
借地借家法第38条第6項の「終了する旨の通知書」を作成し、Aさんに手渡す。
その際に、契約期間終了の6か月前にBさんに送るように指示した。
6 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
⑦5年後
特に問題なく契約終了。
解決のポイント
依頼者双方とも短期間で契約終了を望んでいたことから、
最初から定期建物賃貸借契約を選択することが容易だった。
契約の対象とならないものも複数あったため、
現地調査を行って、可能な限り写真を撮り、
契約対象かそうでないかを視覚的に明確化しておくことが望ましい事案だった。
Aさんが期間満了前の終了通知をし忘れないように、
事前に通知書を作成して手渡しておいた。
お客様の声
ネットで調べると、高額な立退料をとられたという記事を見たり、
法律のことは全くわからないからこそ、不安しかありませんでしたが、
親身に話を聞いてくださり、5年で問題なく退去してもらったので、
安心して、ほっとしています。